都市における樹木の防火機能に関する研究
岩河信文
建築研究報告 No.105, January 1984, 建設省建築研究所
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<概要> |
本報告書は、緑地の計画に関する研究の一環として、緑地の防火効果に関する調査を整理することによって、緑地の防火効果を高める樹木の必要性を示すとともに、その検証のための各種実験を行い、その防火機能を明らかにしたものである。
研究の概要は以下の通りである。
- 都市防火対策の基本的な考え方を示すとともに、我が国の都市防火対策の中で、空地対策が古くから主要な地位を占めていることを明らかにした。
- 空地の防火事例を面および線としての効果に分類して示すとともに、空地の安全性を高める要素としての樹木の存在を明らかにした。すなわち、面としては10Ha以上は安全。しかし、これを下廻る面積でも、樹木の存在によって安全性が保たれること。線として焼止まりの30%以上に緑地が関与しており、しかも、その構成主体は樹木であることが明らかとなった。
- 樹木の防火機能に関する基礎的考え方を示すとともに、各種実験によりその検証を行い、限界値等を導いた。すなわち、樹木の防火機能は、その耐火力と遮熱力とによって支えられること。耐火力は難燃性を示すものであり、その限界値として、輻射受熱量では約12000Kcal/m2h、葉面温度で約400℃の結果を得た。また、遮熱力は難透熱性を示すものであり、配植法により明確な差が見られることが明らかとなった。
- この遮熱力と密接な関係を有する樹木の立面形状について調査を行い、樹冠形状、枝下比に関し類型化を行うとともに、樹冠の空隙率の計算法を開発した。
- 以上をふまえ、樹木の防火力に関する総括的考察を示すとともに、樹木を都市防火対策へ活用するに当っての提案を示した。さらに、火災規模別に安全限界距離確認に便なるものとして算定表を添付した。
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