自然風を対象とせる構造物の風圧力に関する研究 (I)
亀井 勇
建築研究報告 No.16, 1955 建設省建築研究所
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<概要> |
わが国建築物の強度計算にあたって、設計規準に風荷重が取入れられたのは、他の各種構造の計算規準等より比較すればまったく近年に至ってのことである。
わが国は諸外国にくらべて、世界的風災害の記録を持っているにも拘らず設計規準に耐風的考慮を取入れたのは全く近年になってのことである。
わが国の設計規準は昭和3年(1928年)11月警視庁令第27条として始めて定められた。
その内容は次の如き単位面積当たりの風の速度圧のみの規則である。「強度計算に適用する風圧力は建築物の垂直平面1m2に、高さ20尺以下の部分にありては45kg以上、高さ20尺を超ゆる部分にありては100kg以上となすべし、但し50尺を超ゆる煙突、物見塔、広告塔、無線電信電柱の類にありては垂直平面1m2に付150kg以上となすべし、前項の風圧力は建築物の形状又は周囲の状況により増加を命じ、又はその軽減を許可することあるべし」
以上の如き規定であって、風圧力としては屋根面も含めて同一取扱方法による風の速度圧のみを定めたのである。
しかして、この速度圧は第1図に示す如き現行の速度圧分布式に対し相当低荷重である。しかしその傾向は上層に行くに従って速度が増大することを規準式として採用しているのである。
更にこの垂直1m2当りの速度圧は建物の形状、および周囲の状況等により増減する傾向は明らかとなっていたが、ただこれを数量的に示すまでには当時の研究段階では示し得なかった。
殊に建物周囲の状況により速度圧に変化を生ずることが示されているが、その数量的な指示は過去25年間を経た現今に至るも未だに明らかとなっていない。
この警視庁令が出てから七年後の昭和10年(1935年)2月に日本建築学会標準仕様書調査委員会の立案によって鉄筋コンクリート構造計算規準中第5条風圧として新規格を設けるに至った。
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