■建築研究報告 |
名古屋市災害危険区域における建築物復興状況調査 第1研究部 建築研究報告 No.38, 1961 建設省建築研究所 |
<概要> |
われわれは,さきに昭和34年11月,名古屋市より委託を受け,伊勢湾台風による名古屋市の市街地および建築物の被害状況を調査し,それに基づいて建築基準法第39条による災害危険区域指定と,それにともなう建築規制に関する要綱案を作成した。その内容は報告書「伊勢湾台風による名古屋市の市街地および建築物被害調査と防災計画」に詳細に記述し,昭和35年6月にこれを公にした。 その後,名古屋市当局にあっては災害地の実情をさらに調査し,南部低地域に新築される建築物を水害から守るため,この要綱案に十分なる検討を加え,市条例として災害危険区域の指定とそれにともなう建築規制を行うべく準備がすすめられてきた。 われわれもそれに協力してきたが,その規制内容は低地域にある災害危険区域内に今後新改築される建築物が,将来予測される災害から居住者を守りとおすものでなければならず,また一方居住者の負担において十分に消化しうる見通しのものでなければならない。 そこで,一応の成案を得た建築規制の条例案が施行された場合,居住者の経済能力からみて円滑に実施できるか否かを予測してかかる必要が生じたため,名古屋市は昭和35年7月7日付をもって名古屋市長より建築研究所長宛に「災害地域における被災者実態調査研究」の課題のもとに,被災地の復興能力調査の依頼があった。 われわれはこの要請に応えて,昭和35年7月12日〜20日の9日間にわたり,市建築局関係職員ならびに名古屋工業大学,名城大学の建築学科学生の協力を得て,現地の建築物復興状況と条例施行の影響について調査を行った。 その調査結果は,昭和35年9月24日に「名古屋市災害危険区域内における建物復興状況調査報告概要」として,すでにその概要報告を行ったが,本報告はその調査結果を詳細にとりまとめたものである。 すべての法令は,施行にあたりその影響を当然予測してかかるが,応々にして腰だめで処理されてきた嫌いがある。しかし,今回の名古屋市の条例案は十分な調査を基にして行わんとしているもので,行政上の一つの進歩であり,またかくすることによって規制を受ける市民も納得できるものである。この点,名古屋市当局の行政態度に対し深く敬意を表したい。 おわりに,われわれの調査に対し協力を惜しまなかった方々に対し謝意を表すものである。 昭和36年3月31日 |