■建築研究報告

材料設計に関する研究 (第3報)  
−材料設計試験方法−

材料設計研究委員会

建築研究報告  No.56,  1970  建設省建築研究所


<概要>

  昭和35年から,「建築材料の合理的な選定方式」という課題名で進められてきた材料設計に関する研究の成果は,既に,第1報の建築研究報告No.44(昭和40年3月)および第2報の建築研究報告No.51(昭和43年3月)によって報告されているが,ここに,材料設計の考え方に基づいて提案された試験方法がある程度まとまったので,第3報として発表する運びになった。
  この間に,本研究に関連した国外,国内の諸情勢にもかなり大きな変化を見せているので,その一端を紹介しておきたいと思う。
  まず国外の情勢であるが,本研究に対する海外の反響は,国内よりもむしろずっと早く,かつ大きいように思われる。
  すなわち,昭和40年に開かれたCIB(Conseil International du Batiment la Recherches, L'Etudeet la Documentation)大会において,当時の建築研究所長,平賀博士は,材料設計に関する研究の概要を紹介したパンフレット“On the Systematic Method for Selecting Building Materials”を携えて行かれたが,ちょうどこのCIB大会においては,建築に要求される性能という考え方が論議され,それが材料設計の基本的な考え方と通ずる点も多かったためか,その後,このパンフレットに対する海外からの問合わせが続々ときて,パンフレットはたちまちのうちに品切れになった。その中には,研究会の資料とするために複製の許可を電報で繰り返し依頼してきた熱心なところもあった
  CIBの機関誌Buildに材料設計の記事を出したいという連絡は,Buildの編集者からその発刊以前にあったが,われわれとしては,その後の研究の発展も含めて新しい英文報告を出すよう準備していたので,それができるまで待ってもらった。昨年11月にこの英文報告BRI Research Paper No.36“On the Systematic Method for Selecting Building Materials”も公刊されたので,Build誌に近いうちに紹介される予定になっている。
  一方,国内においては,建築性能に関する論議が,居住水準の向上,建築の工業生産化に対する要求が高まるにつれて盛んになった。
  材料設計の考え方は,この点についての組織的なアプローチを可能にする研究のひとつであったので,建築や構成部材の性能が問題にされる研究においては,材料設計の研究成果が,何らかのかたちで参考にされてきた。材料設計ということばもようやく人々の間に普及し,例えば,建築雑誌(43年5月号)では,材料をいかに選択するかという特別号を出しているが,ここでも材料設計の紹介がされているし,また,幾つかの大学では,材料設計に関する研究報告を教材として使用し,材料の講義の中に材料設計をおり込み始めている。
  このように,より優れた生活環境を作るためのシステムのひとつとして考えてきた材料設計の研究の成果が,世の中から要望され,期待されている度合いは,われわれの研究速度を上まわるものがあるように感じられるので,われわれの研究グループは,できる限りのエネルギーをこの研究に投入して,この研究がより実用面で活用できるように一層の努力を払う考えでいる。
  以上のような情勢から,本研究報告はもちろん,まだまだ不充分の点が多いが,現在までの得られた成果を一応とりまとめて,一日も早く各方面の参考に供したいという意図で印刷に付すことになった。
  本報告の内容は,材料設計の考え方に基づいて,材料や部材のグレードを定める場合に採用すべき試験方法・判定方法を提案したものである。本来ならば,この試験方法は要求条件100項目に対応して整備されなければならないが,ここで取り上げたのは,建築研究所で特別研究として取り上げられている「物理的居住水準よりみた住宅構成部材の必要性能に関する研究」に関連して,公共住宅の各部位を構成する部材や材料を対象とした50項目の試験方法だけを取り扱っていることをお断りしておきたい。これは,建築研究所における材料設計の研究としては,もっとも重点的に推進すべき範囲であると判断したためで,この報告は引続いて発表予定の公共住宅の物理的居住水準に関するレポートのための基礎的な資料のひとつとなるはずである。
  なお,研究の性格上,本報告を作成するに当たって参考にさせていただいた文献は非常に数多い。直接的な関連のある資料は,その箇所に出典を参考文献として挙げさせていただいたが,そのほかにも,全般的に参考にさせていただいた資料も多く,それらについてはとくに文献として挙げていないものもある。ここでこれらの資料の著者,関係者の方々に深く謝意を表する次第である。
  また,本報告書の作成に直接関係したのは材料設計研究委員会のメンバーであるが,それ以外の建築研究所の所員にはいろいろと助言を載いた。とくに第5研究部の皆さんには,この報告書の内容をそれぞれ専門の立場からご検討をお願いし,貴重なご意見を載いた。  これらの方々のご協力に対しても,感謝するとともに,今後ともこの研究の推進に御助力をお願いする次第である。



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